送料無料を止めると、本当に売上は下がるのか?

『送料無料』は購入者側の立場からすると、非常に魅力的な言葉の一つです。
特に新規顧客を集めるためのお試し商品の販売時や、購入金額に条件を設けて『〇〇円以上で送料無料』と打ち出す場合には有効だと思います。

ただ、一方では送料無料を撤廃したり、送料無料の条件金額を上げたりしているショップも増えています。実際、私たちのクライアントで送料無料の条件金額を3万円としているショップがありますが、95%以上のお客様が送料を払って購入してくださっています。ですので、結論としては、お客様負担で問題ありません。

ですが、「これまで送料無料を掲げていたので、お客様に負担してもらうのは不安がある」「購入金額の条件を上げることには不安がある」という声を多く聞きますので、送料について解説をします。

ご存知のように送料はコストです。そのため送料無料を打ち出した場合、送料を誰かが負担する必要があります。

① 商品の価格に送料を含める(お客様の負担・あなたの負担)
② 『〇〇円以上』と購入金額に条件を設ける(あなたの負担)
③ 運送会社に値引きを依頼する(運送会社の負担)

では、それぞれのメリットとデメリットを見ていきましょう。

① 商品の価格に送料を含める(お客様の負担・あなたの負担)

メリット:購入のハードルが下がる、お得感がある
デメリット:お客様が送料を負担する際の購入のハードルが上がる、利益が減少する

メリットは、お客様にとってお得感が感じられ、購入のハードルが下がることです。特に新規顧客を得るためにお試しセットを販売する場合に有効です。また、お客様が贈り物のギフトセットを選んでいる場合であれば、送料について心配をする必要がなくなりますので、商品の検討に集中できるという点が挙げられます。ただし、商品の価格に送料を丸ごとコストとして含めてしまうとお客様にも伝わりますので、ある程度はあなたが負担する必要があります。

デメリットは、送料が無料にならない場合の購入についてハードルを上げてしまうことです。
そのため、お試しセットを作る際には、同時に購入後にリピートをしてもらうための仕組みづくりを行う必要があります。

具体的には、リピートしやすい量で構成した送料無料のセットを準備しておく、お試しセット購入者のためだけの特別クーポンを用意する(送料の一部をあなたが負担する)など、どのぐらいの期間でリピートをしてもらえそうなのか、その際にどんなアプローチ(メール、ハガキ、SNS、電話など)を行うのか、といったその後の流れをしっかりと考えておく必要があります。

ただし、送料をあなたが負担することは値引きと同様に利益を減額させることになりますので、利益が残るようにしっかりと計算をする必要があります。たべラボでは粗利率を40~50%確保することを推奨しています。


(私たちが最近行った事例としては、大容量で販売していた商品を通販用に少量パックへ変更し、かつ送料無料の4個セットで販売をしています。このセットの送料は福岡から関東までの送料を加えたセット価格とし、粗利40%を確保しています。)

②『〇〇円以上』と購入金額に条件を設ける(あなたの負担)

メリット:購入のハードルが下がる、お得感がある
デメリット:利益が減少する、売上の先食いになる

この場合、上記で述べたことと同じように、あなたが送料を負担しても粗利が40~50%は確保できるように設定する必要があります。また粗利だけではなく、お客様が量的に負担にならない購入金額になっている必要があります。つまり、あなたの商品のお客様がどういった属性の方で、どのくらいの頻度で食べてくれているのかを知っておく必要があります。

多く買いすぎて腐らせてしまったり、食べる頻度が増えて飽きられてしまったりしないように配慮していただきたいのです。そのためにも、あなたのメインとなるお客様が、どんな家族構成で、どんな時に、どれくらいの頻度で、どのくらいの量を食べている、あるいは使っているのか、ということを理解しておくことが重要となります。

この考え方は、PR戦略(メディア露出、インフルエンサーの活用、多額の広告費を投入するなど)やサブスク戦略を行う場合にも非常に重要です。初回に購入する商品の量がお客様の消費量よりも多すぎる場合や商品の種類に幅がなく飽きられてしまう場合には、1度きりのお付き合いとなる可能性が極めて高く、悲しい結末が待っています。

売上をアップさせることは重要ですが、事業を継続させることはもっと重要です。そのためにも送料をあなたが負担する場合には、粗利とお客様の属性をしっかりと把握した上で進めるようにしてください。

③運送会社に値引きを依頼する(運送会社の負担)

メリット:自社の利益が確保できる、お客様の負担が軽減される
デメリット:地域経済にとって悪影響、地元での評判が下がる、商品を丁寧に扱ってもらえない

この方法は10~20年前までに流行った手法です。
ですが現在は、燃料費の高騰や働き方改革などにより運送会社も値引きに応じなくなりました。元々、長期的に考えればデメリットしかない方法です。力にものを言わせての値引きは、一切お勧めしていません。運送会社だけでなく、すべての取引先がしっかりと利益を出せることで、あなたの事業も継続が可能となります。

解説は以上となりますが、①②を総合的に検討して送料負担をご検討をいただければと思います。
私たちの印象としては、健康のために安心できる食品購入するのであれば、送料を払うことに抵抗のないお客様が増え続けているように感じています。